屋根塗装は雨漏りに効果的?塗装の目的と雨漏り工事の種類を紹介
執筆者:ペイントセレクト編集長
塗装業界での長年の工事経験を元に、外壁塗装に関するお役立ち情報を発信中。読者様に正しい情報を届け、塗装に満足してもらうのが私の使命です。
「雨漏りが気になるから屋根塗装をした方がいいのかな?」
このように考える人は多くいますが、実は間違った考えということをご存知でしたか?
屋根塗装の役割は、紫外線や雨風、埃や有害物質などから屋根を保護することです。
屋根の寿命を保つために欠かせないメンテナンスのひとつではありますが、屋根塗装をすれば雨漏りの心配はないというわけではありません。
もちろん定期的に屋根塗装をする必要性はあります。
すべての屋根ではないですが、金属屋根・スレート屋根・セメント瓦・モニエル瓦は塗装をおこなうべきです。
屋根塗装をしなければ劣化が進み、最悪の場合雨漏りを引き起こす可能性が高くなり非常に危険です。
では、雨漏りから屋根を守るためにはどのようにすればよいのでしょうか。
この記事では、屋根塗装の効果や目的、雨漏りした場合の工事方法など詳しく説明します。
屋根塗装と雨漏りの関係性について、しっかり学んでいきましょう。
もくじ
屋根塗装で雨漏りを直すことはできるの?
結論から伝えると、屋根塗装で雨漏りを直すことはできません!
屋根からの雨漏は、ルーフィングや屋根板金の劣化が原因で発生することがほとんどだからです。
雨漏りの発生の仕組みを理解するために、まずは屋根の構造について説明します。
屋根は以下の3つの部材で構造されています。
- 屋根仕上げ材:カラーベストなど屋根表面の仕上げに使う【一次防水】
- ルーフィング:屋根仕上げ材の下に敷く防水シート【二次防水】
- 野地板:屋根本体を保持させるための下地
屋根表面の「屋根仕上げ材」は、塗料の膜の劣化により防水効果が薄れて雨水が侵入しやすくなります。
しかし、下に敷いてある「ルーフィング」のおかげで屋根内部に雨水が侵入することはありません。
既に雨漏りが発生している場合は、二次防水である「ルーフィング」が劣化しているということになるため、いくら屋根塗装をしても雨漏りは直らないという仕組みです。
屋根板金の劣化が原因で雨漏りが発生した場合も、屋根塗装で雨漏りは直りません。
雨漏りが発生した場合は、屋根塗装ではなくルーフィングや屋根板金の修理が必要になります。
屋根塗装にはどんな効果や目的があるの?
雨漏りが直せないならば、屋根塗装には一体どんな効果や目的があるのでしょうか。
色あせたり汚れが目立ってきた屋根に塗装することで「見た目がきれいになる」と想像する人は多いかと思います。
しかし屋根塗装をすることで得られる効果は、見た目の美しさだけではありません。
建物全体を守る効果や目的があるのです。
屋根塗装をするとなぜ建物を守ることができるのかを以下で詳しく説明します。
目的1:雨漏りを予防して建物を守る
1つめの屋根塗装の目的は、雨漏りを予防して建物を守ることです。
屋根塗装は屋根仕上げ材を保護する役割があります。
紫外線や雨風などの劣化要因から屋根仕上げ材を守るのが「塗料の膜」です。
しかし、塗料の膜の効果は永久的ではありません。
長い間紫外線や雨風などの影響を受け続けると剥がれや色あせなどの劣化が起こり、屋根仕上げ材を保護する効果を失います。
紫外線や雨風の影響をダイレクトに受けた屋根仕上げ材は次第に劣化し、やがてルーフィングにまで影響をおよぼすため非常に危険です。
雨漏りの原因であるルーフィングの劣化を防ぐために、屋根仕上げ材の一次防水を保つことが屋根塗装の目的となります。
目的2:汚れやコケ・藻を防いで美しさを保つ
2つめの屋根塗装の目的は、汚れやコケ・藻を防い美しさを保つことです。
雨風にさらされ続けた屋根は、時間の経過とともに汚れが目立ってきます。
これは、塗料の膜が劣化することで表面のツヤがなくなり、細かいデコボコができることが原因です。
デコボコに入り込んだ汚れは落ちにくく、放っておくとどんどん蓄積していきます。
また、日当たりが悪い箇所ではコケや藻も発生しやすいです。
屋根の汚れなどは見た目の悪さだけではなく防水効果も低くなるため、雨漏りの可能性が高くなります。
塗料の種類を「防カビ」「低汚染」「セルフクリーニング」などの機能性塗料にすることで、より効果的に汚れやコケ・藻を防ぐことが可能です。
目的3:屋根仕上げ材の寿命を保つ
3つめの屋根塗装の目的は、屋根仕上げ材の寿命を保つためです。
屋根仕上げ材の寿命は、あくまでも定期的にメンテナンスをした場合の寿命となります。
一般的な塗料は約10年しか効果が保てないため、寿命までに必要な屋根塗装回数は屋根仕上げ材の種類によって異なります。
塗料の種類 |
耐用年数 |
寿命までの塗装回数 |
金属屋根 (トタン) |
10~20年 |
2回 |
金属屋根 (ガルバニウム) |
20~30年 |
3回 |
スレート屋根 |
15~25年 |
2回 |
セメント瓦 |
30~40年 |
4回 |
屋根は建物の中で、もっとも紫外線や雨風などの影響を受けやすい箇所です。
住宅環境やお住まいの地域によって劣化状況が異なるため、屋根仕上げ材の耐用年数だけではなく、実際の劣化具合もあわせて判断しましょう。
目的別に紹介!屋根塗装の適切なタイミングは?
屋根塗装は適切なタイミングは、主に以下の3つがあります。
- 塗料の剥がれや色あせが目立ってきた
- 汚れやコケ・藻が目立ってきた
- 築10年後もしくは前回の塗装から10年後
屋根塗装の目的をもとに塗装のタイミングを説明します。
雨漏りを予防するための適切な塗装タイミング
雨漏りを予防するためには、塗料の剥がれや色あせが目立ってきたタイミングで塗装することをおすすめします。
ルーフィングに影響が出る前に塗装することで、建物全体の劣化も防ぐことが可能です。
汚れやコケ・藻を防ぐための適切な塗装タイミング
汚れやコケ・藻が目立ってきたと感じたら、塗料の膜が劣化しているサインです。
時間が経つほど汚れなどは落ちにくくなるので、早めに屋根塗装をすることをおすすめします。
屋根仕上げ材の寿命を保つための適切な塗装タイミング
塗料の寿命が来る前、もしくは症状が出始めたら早めに屋根塗装をすることをおすすめします。
あまり劣化が見られない状態でも、築10年後もしくは前回の塗装から10年後を目安にすると良いです。
雨漏りしたらどんな屋根工事をすればいいの?
雨漏りを直すためには発生箇所や原因を特定し、その原因に合った工事をおこなう必要があります。
雨漏りの主な発生原因は、以下のようなものがあります。
屋根仕上げ材の 劣化による雨漏り |
・スレート屋根:雨水が吸収されやすくなる ・瓦屋根:割れやすくなる ・金属屋根:錆びて穴があく |
板金部位の 劣化による雨漏り |
・雨仕舞板金:錆びたりへこんだりして穴があく ・棟板金:台風などで飛ばされやすい |
施工不良による 雨漏り |
・雨仕舞をおこなっていない ・スレートの縁切りをおこなっていない |
また、雨漏りの原因によって工事方法も異なります。
雨漏りを直すための工事方法を、以下で詳しく説明していきます。
屋根のカバー工法
カバー工法とは、既存の屋根仕上げ材の上に新しい屋根仕上げ材を取り付ける屋根を全面的に工事するものです。
既存屋根の撤去作業がないため、工期やコストをおさえて屋根全面を工事することができます。
カバー工法に向いている屋根
- ルーフィングの劣化がない場合
- 耐震強度に問題がない
- 費用をおさえたい
- 騒音やホコリが少ない工法でやりたい
- 2004年以前に製造されたスレート屋根
カバー工法は、屋根仕上げ材を重ねた分重みが増すため、十分な耐震強度がある屋根のみに施工できる工事方法です。
カバー工法を検討する際は、耐震強度に問題がないか専門業者に調査してもらいましょう。
また、2004年以前に製造されたスレート屋根には、有害物質であるアスベストが含まれています。
人体への健康被害を考えると、既存屋根の撤去作業がないカバー工法で施工する方が安心です。
屋根の葺き替え(屋根全面の工事)
葺き替えとは、既存の屋根仕上げ材とルーフィングを撤去し、新しい屋根材を取り付ける屋根を全面的に工事するものです。
既存屋根の撤去をするためカバー工法よりも工期やコストはかかりますが、雨漏りの症状や屋根の状況によっては葺き替え工事をおすすめします。
葺き替えに向いている屋根
- 瓦屋根
- 以前にカバー工法をしている
- ルーフィングが劣化している
- 既に雨漏りが発生している
- 屋根の劣化がはげしい
- 屋根の耐久性を高めたい
瓦屋根は耐震強度の問題や施工の難しさから、基本的には葺き替えしかできません。
また、既に雨漏りをしている場合はルーフィングが劣化している可能性が高いため、葺き替え工事の方が適しています。
屋根板金(雨仕舞板金)工事
屋根板金(雨仕舞板金)工事とは、古くなった板金と下地をはがして、新しい板金と下地を設置する屋根を部分的に工事するものです。
屋根には、雨水を受け流すための雨仕舞という防水施工がされています。
この雨仕舞部分に取り付けられているのが「雨仕舞板金」で、雨漏りの原因になることが非常に多い箇所です。
「雨仕舞板金」は、屋根の上に降った雨水を地面へスムーズに流し出す役割があります。
しかし、経年劣化などによってサビたり穴が空いたりすると、雨水は屋根の上にたまったままになり雨漏りが発生する可能性が高くなります。
屋根のさまざまな箇所に取り付けられている「雨仕舞板金」ですが、特に雨漏りが発生しやすい箇所は以下のとおりです。
板金の種類 |
板金の特徴 |
棟板金 |
屋根のてっぺんに取り付けられている板金 風の影響を受けやすく台風などの強風時に飛ばされやすい |
谷どい板金 |
屋根の谷になっている部分に取り付けられている板金 ゲリラ豪雨などで多量の雨水がたまると雨漏りが発生しやすい |
雨押え板金 |
屋根と外壁が接している面に取り付けられている板金 複雑な構造で雨漏りのリスクが高い |
屋根板金(雨仕舞板金)工事は、技術や知識がなければ施工不良を起こす可能性が高くなるため、実績のある専門業者に依頼することをおすすめします。
瓦のズレや割れ、漆喰の修理
瓦屋根の部分的な修理は、以下の3つがあります。
瓦のズレを修理する
瓦のズレは、元の位置に戻すだけで修理ができますが、瓦が欠けている場合は新しい瓦に取り替える必要があります。
瓦がズレてしまうと雨水が侵入して雨漏りが発生する原因になります。地震などの大きな揺れでズレることがあるため、放置したままにしないで修理をしましょう。
瓦の割れを修理する
瓦の割れは、新しい瓦に取り替えることで修理ができます。
瓦が割れてしまうと雨水が侵入して雨漏りが発生する原因になります。
特に台風時は物が飛んできて瓦が割れる可能性が高くなるため、台風の後は屋根をチェックしましょう。
漆喰のひび割れや崩れを修理する
漆喰のひび割れや崩れは、古い漆喰を取り除いた後に新しい漆喰を埋めることで修理ができます。
漆喰は経年劣化などでひびが入りやすく、もろくなると崩れてしまいます。
放っておくと崩れた箇所から雨水が侵入して雨漏りが発生する原因になります。
漆喰のひび割れや崩れは地上からでも確認しやすいので、定期的にチェックすることをおすすめします。
雨漏り修理の実績が多い業者に依頼することが大切
雨漏り修理を依頼する際は、実績が多い業者を選ぶことが非常に大切です。
雨漏りは屋根仕上げ材の劣化、ルーフィングの劣化、雨仕舞板金の劣化など、いくつもの原因が考えられます。
原因に合った修理をしなければ雨漏りは一向におさまらないため、雨漏りの原因を的確に把握する必要があります。
また、雨漏りの修理には専門技術が求められるため、依頼する業者を間違えないように注意しなければいけません。
屋根の種類・雨漏り箇所 |
専門業者 |
瓦屋根 |
瓦屋、屋根屋 |
スレート屋根 |
屋根屋 |
金属屋根、雨仕舞板金 |
板金業者 |
専門業者の判断が難しい場合は、「雨漏り診断士」や「建築板金基幹技能者」の資格を保有している業者に依頼することをおすすめします。
どちらの資格も知識と経験がある証のため、的確な調査や修理をしてくれます。
実績が少ない業者に依頼すると適切な修理がおこなわれない可能性が高く、再び雨漏れが発生してしまう恐れがあります。
雨漏り修理の実績が多い業者に依頼することを心掛けましょう。
まとめ:雨漏り予防なら「屋根塗装」、雨漏りしたなら「屋根工事」をしよう!
雨漏りは放っておくと屋根だけではなく、建物全体の劣化に関わるほどの大きな問題です。
屋根の劣化がひどくなる前に、屋根塗装で雨漏りの予防をすることをおすすめします。
劣化症状や屋根の種類に合わせて適切なタイミングで屋根塗装をすることで、屋根の寿命を保つことが可能です。
また、既に雨漏りをしているなら屋根工事を早急におこないましょう。
工事や修理の方法はいくつかありますが、どれも多くの知識や経験が必要とされるものです。
原因に合った修理や工事をおこなわなければ、再び雨漏りが発生する可能性が高いです。
業者に依頼する際は、専門技術があり実績の多い業者を選びましょう。
ペイントセレクトでは、お客様ひとりひとりに専門のコンシェルジュをおつけして、ご希望に沿った優良業者をご紹介します。